【禅語】心静即身涼:全集中で対象と一体になる
暑い日々が続きますね。今年の暑さは例年より厳しいという予報だそう。去年も暑かったけど、例年よりってどれぐらい?と思いつつ、あまり深く考えずに、来るものに対しての心の準備をしましょう!
暑い時期を過ごすための言葉ではないのですが、今週の『心が軽くなる禅語で微笑みヨガ』のテーマは「心静即身涼」です。
心静即身涼(こころしずかなれば すなわちみすずし)。
この言葉を読みながら、鼻から息を細く長く吐くだけで、ちょっと涼しくなってきませんか♪
【心が対象と一体になると、、、】
「不是禅房無熱到 但能心静即身涼」(是禅房に熱到ることなきあらず 但だよく心静かなれば即ち身も涼し)という白居易の詩にある言葉です。
座禅をしている部屋で暑い熱を感じるぐらいでは、まだまだ禅定に至れていない(集中が足りていない)。対象と一体になって心が無になっていれば、暑さを感じないものだ、という意味です。
禅定(ぜんじょう)とはヨガでいうディヤーナ(Dhyana)、心が集中して対象と同一化した状態のこと。ディヤーナは八支則(8つの階段)の7番目で、8番目がサマーディ(Samadhi)悟りの境地の一つ手前です。
「暑い」という体感、つまり、現実に心が謀殺されている状態では禅定には至れない。
逆にいうと、何かに夢中になっていて、それと一体になっている状態では、暑さや寒さは感じない。
確かに、瞑想をしていて、自分の内側の感覚に深く集中していると、身体の汗ばみや、組んでいる脚の痛みなどの体感が消えてなくなってきます。瞑想を終えて元に戻ると、汗が滝のように流れていたなんてこともあります。
ヴィパッサナー瞑想の合宿の奉仕をしたときのことを思い出します。すごく暑い時期だったのですが、みなさん汗だらだらでも涼しい顔をして座っていました。
奉仕者の最大の関心事は参加者の健康管理なので、心配になって、冷たい水にレモン果汁とお塩を入れた重たいポリタンクを一日に何度も運びました。人間の身体はよくできているな~と思ったのですが、汗は身体を冷やす役割をしますし、ちゃんと水分と塩分をとって休養すれば、体調を崩すことなく過ごせるのはスゴイです。
話しを戻しますと、「禅定」の状態はスポーツだと「ゾーンに入る」、ビジネスだと「フロー」と呼ぶ状態と共通していますね。
集中して心が対象と一体化すると、すっと心が静かになって、不思議な感覚を味わうがことがあります。
かなり前の話ですが、ニセコのアンヌプリ東尾根を絶好のパウダー・コンディションで滑れるチャンスに恵まれて、大事に、最高に滑ろうと集中したのだと思います。滑りはじめて数ターンめには血圧が下がっちゃったのかなと思うぐらい静かになり、無音の世界。ワンターンずつがスローモーションに見えて、この上ない至福の感情を味わったのを今でもよく覚えています。
対象と一体化した全集中の状態、禅定、ディヤーナ、ゾーン、フロー。
鬼滅の刃の「全集中、水の呼吸」が強いのは「全集中」の力ですね。
思い通りに全集中モードに入ることができれば、普段使っていない脳の一部にスイッチが入って、思わぬ潜在能力を発揮できるのかもしれません。
【夏を涼しく快適に過ごすための智慧2選】
とはいえ、禅定を目指しても、今日始めてすぐに到達して暑さを感じなくなる、のは現実的ではないので、「心静即身涼」とは別の話になりますが、思考法とメンタルを変えるだけで涼しく過ごせる方法2つをご紹介しようと思います。
1】 「暑い、暑い」と言わない:ありたくないイメージを口にださない
自分で発した言葉は耳から聞こえて、脳に届きます。
そしてそれを聞いた脳は「暑いよね~」と繰り返します。
さらに悪いことに、だいたい頭は勝手にネガティブ方向の独り言をいいますので、「暑いよね~」⇒「不快だよね~」⇒「なんでこんな不快な思いをしなきゃいけないの~」といったように、続いていきます。
自分でストレス発散のために言った不快な気持ちを含んだ「暑い~」という言葉によって、再び不快な気持ちで自分を苦しめてしまうんですね。
またまた雪の話になりますが、春に滑りにいった八甲田山でロープウェイが強風で止まってしまったので、山頂まで歩いて登ったときのこと。
雪山での行動に慣れている人は登っているときに「キツイ」「辛い」「苦しい」「寒い」「暑い」などの感情表現をせずに黙々と登るのですが、パーティーの中の大人の女性で「もうやだ~、帰りたい~」「辛い~」「あとどれぐらい登るんですか~?」という人がいました。
繰り返し言うので、どんどん辛そうになっていくのが気の毒でしたが、そこまで感情表現を素直にされると、中学生を見守るように、微笑ましくもあり、皆で励ましながら楽しく登れました。
ただ、この人はいつもこんな感じでお仕事などをしているのなら、大変だろうなぁと少し気の毒に思いました。自分で自分を苦しめることはしないほうが楽だからです。
とはいえ、感情を外に出さないのもストレスが溜まるので、ため息を吐くのと同時に、ジブリッシュ(意味のない言葉)を話して外に出していくのがおススメです。
2】 涼しさにフォーカスする:ありたいイメージに意識を向ける
夕方のリビングで、まだ蒸し暑いなあと思いながらも、窓から入ってくる風があれば、「あ~ いい風が入ってくる~」と声に出して、ぬるい風の中にもひんやりとした感触を感じられることに意識を向けてみると、涼しさを感じられます。
ヒグラシの声に耳を傾けて、涼しげな音だな~と思うと、ちょっと涼しく感じたり。
身体が「涼しい~」という意識をもつと、今感じている感覚の中から、自然と涼しいと感じるものを選びだして、感じ始めるように思います。
先日、遮光カーテンを日中も閉めたくなるような、海をデザインした柄のものに新調したのですが、昼間は外気の熱を遮ってくれるので、部屋の中は冷たい海の中なんだという想像をして、涼しげな気分に浸っています。
冬になったら、この同じカーテンに寒い外気を遮ってもらって、常夏の白砂のビーチにいるような気分で、南国の温かい日差しをイメージして暖かさを感じることでしょう。
ありたくないイメージは口にしない、ありたいイメージに意識を向ける。
この二つは涼を感じる工夫というだけでなく、すべての状況で快適に過ごす役に立つと思いますので、何かの時に思い出して、やってみてください。
日常生活でさっと禅定になる、というのは難しいですが、この二つなら出来そうですね!
ではでは、暑い日々が続きますが、快適に過ごしましょう♪